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2022.03.04

コラム

海外のアスベストに対する考え

海外のアスベストに対する考え

珪藻土バスマットの記事アスベストによる死者の数の記事で少し触れたように、世界ではアスベストに対する規制、そして被害者への救済制度を設置している国もあれば、生産・使用を続けている国があるなど国が異なればアスベストに対する考えも異なっています。今回は海外のアスベストに対する考えについて解説していきます。

1.カナダとアスベスト

2.ロシアとアスベスト

3.アメリカとアスベスト

4.中国とアスベスト

5.まとめ

1.カナダとアスベスト

まずはじめに、アスベストという名前の語源はギリシャ語で永久不滅という意味のasbestosからきていますが、実は同じ名前の町がカナダ東部に存在していました。この町はケベック州最大の都市モントリールから100キロほどの位置する人口6700人の町です。近くに2012年までアスベストを採掘していたジェフェリー鉱山がありますが、アスベストに発がん性があるとWHOが断言してからは経済関係を発展させる上での障害となっており、2020年の12月に正式に町名が改名されました。経済活動や町のイメージに悪影響を及ぼすほど世界的に見ても巨大な鉱山を保有していたカナダは一貫してアスベスト生産のほぼすべてを輸出に回していました。現在の段階ではアスベストとアスベスト含有製品の輸出入・販売・使用・アスベスト含有製品の製造が禁止されていますが、建物や設備に使用するアスベスト含有製品については禁止ではなく、連邦や州、自治体の規則や規制により管理する体制をとっています。

2.ロシアとアスベスト

前述のカナダと同じく、ロシア中央部のスヴェルドロフスク州に巨大なアスベスト鉱山があることから、アスベストという都市名が名づけられた市が存在しています。カナダと異なるのはアスベストを今でも生産し続けていることです。ソ連時代はロシアだけでなくカザフスタン等を含んでいますが、1976年にはソ連のアスベスト生産量はカナダを抜いて世界首位に立ちました。1991年にソ連が崩壊してからは消費や生産、輸出量が激減しましたがまた持ち直しています。国内消費のみ減少を続けており、生産、輸出は再び増加している状況です。その上、ロシアのアスベスト鉱山近郊では多くの家庭がアスベスト採鉱からの収入に頼っている状況ですので市民の発がん性は上昇していますが国営企業のウラルアスベスト社(世界でも数少ないアスベスト企業)は換気扇や優れたマスクの使用により病気は減っていると主張しています。ロシア政府もアスベストによる被害はないと主張している状況です。

3.アメリカとアスベスト

アスベスト使用大国と呼ばれていましたが1980年代を通じて激減しました。しかし今でも輸入・消費があります。現在も使用が認められているアスベスト含有製品が残っており、対策を見直すべき化学物質のひとつに法律で掲げられていますがトランプ政権のもとでは進展がありませんでした。そのため、ロシアのアスベスト企業の「トランプ政権は我々を支持してくれている」との主張を助長する結果となっています。各地に被害者団体があり、アメリカの環境保護庁(EPA)は市民をアスベストばく露から守るための助成金やアスベスト作業を実施する上での訓練と認定を行うプログラムなどを定めていますが全面的な禁止には至っていません。

4.中国とアスベスト

中国はアスベスト生産国である上に、国内生産のほとんどを消費するだけでは足りず、ロシアから輸入もしている消費大国です。輸出はまだわずかで定着していません。ロシアと異なり、政府が「アスベストによる健康被害はない」と公言しておらず、アスベスト健康被害の論文なども発表されてはいますが実態は不明です。禁止されているアスベストはありますが、自動車用ブレーキや壁材等一部に使用が認められているものもあります。また、中国の規制方法は「アスベストの使用禁止、アスベストを含有してはならない」等のため実際に含有率基準が示されていないこと、また、測定方法にも検出限界があり全ての製品に無石綿と称することができると予想されています。国際基準に照らしての分析方法や分析機関を含めて、中国のアスベスト規制についての信頼性は疑わしいものであるといえます。

5.まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は世界的に見ても輸出入、販売、使用の多い国をピップアップして解説しました。アスベスト産業で潤ったためアスベストと名前を変えた町や市があること、またその後の町の対応については対照的でしたね。国の方針がそれぞれ異なるため全面的な禁止に至っていないことが分かります。各国の考えを日本が覆すことは困難なため、やはり日本国内の輸入品に対する規制をより厳格化していくことが求められます。今回は解説できませんでしたがイギリスでは日本の石綿健康被害救済制度や労災給付に相当する制度があります。また、アスベスト関連疾患の被害者の方々がイギリスを訪問するなど、同時期に輸入に依存した日本とイギリスにはアスベストに関して深いかかわりがあります。よろしければ両国に関するコラムもご覧ください。(イギリスのアスベスト被害と日本

アスベストに関するQ&A 厚労省ホームページより
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