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2022.03.28

コラム

イギリスのアスベスト被害と日本

イギリスも日本と同じようにアスベストを輸入していた過去があります。イギリスには日本と同じようなアスベスト被害救済制度と呼ばれる制度はあるのでしょうか?今回は海外のアスベストに対する考えのコラムのまとめで少し触れたイギリスと日本の関係について解説していきます。

1.イギリスのアスベスト輸入量と死亡者数について

2.イギリスの補償・救済制度

3.まとめ

1.イギリスのアスベスト輸入量と死亡者数について

最初に述べた通り、イギリスも日本もアスベストを輸入し依存してきました。イギリスは、日本よりもアスベストの輸入が1910年頃からと少し早く、消費量もやや多いものの輸入ピーク時の数字にそれほど変わりはありません。イギリスでは安全衛生庁(HSE)が中皮腫での死亡者数の予測を行っており、現在の年間中皮腫死亡者数2,500人でピークを迎え今後は減少していくとしています。しかし、以前は2010年に1,500人でピーク、2011~2015年に1950人~2450人でピークと予測されていたものが、新たな予測をするたびにピークが遅くなり死亡者数が増えていることから、これから死亡者数は減少していくと断言ができない状況です。

なお、日本の人口はイギリスの約2倍です。つまり、イギリスの約2倍アスベストにばく露した可能性のある人が日本には存在していると考えられます。イギリスの約2倍程度まで中皮腫による死者が増加する可能性もあるということなのです。

2.イギリスの補償・救済制度

イギリスでは、日本の労災保険制度に相当する労働災害障害給付(IIDB)制度に加えて、石綿健康被害救済制度に相当する2008年びまん性中皮腫支払(2008DMP)制度があります。イギリスのIIDBによる中皮腫の認定率は、2007年以降100%です。しかし、日本での労災補償は95%に近付いているものの救済制度では90%に満たないのが現状です。日本よりイギリスの方が補償・救済状況がはるかに進んでおり、アスベスト肺やびまん性胸膜肥厚などの他のアスベスト関連疾患の認定率についても100%を維持しています。ただ、IIDBは日本の労災保険制度に相当するものではありますが、日本のように事業主が労災保険料を負担する保険制度ではなく、税金による社会保障制度です。また、日本の療養補償給付のように1つの給付で所得の補償を担うわけではなく、IIDB以外の給付と組み合わせて支給されます。事業主は労災保険料を負担することはありませんが、日本にもある使用者賠償責任保険(EL保険)に加入することを義務付けられています。このように、イギリスのIIDBは日本の労災保険制度に似ているようですが仕組みはかなり違っています。さらに、IIDBは請求日の3か月前よりも前の期間については支払われません。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は日本と同じようにアスベストの輸入に依存してきたイギリスのアスベスト救済制度についてご説明しました。日本の労災保険制度に相当するイギリスの制度の認定率が日本よりも高いという事実は、救済制度が日本より進んでいることを証明しています。ただ、国が違えば制度に対する認識も違います。日本ではEL保険は労災上乗せ保険と呼ばれ任意加入の保険ですがイギリスでは加入が義務付けられており、さらに保険契約は最低500万ポンド(日本円で約7億9000万円)をカバーしなければならないものと決まっています。2017年には日本の中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の代表団がイギリスを訪問するなど交流が続けられています。救済制度の違いがあるとはいえ制度の仕組み・認定が進んでいるイギリスからは日本の救済のあり方について参考になると考えられます。

アスベストに関するQ&A 厚労省ホームページより
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