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2022.01.14

コラム

アスベストによる健康被害 びまん性胸膜肥厚

アスベストにさらされることにより引き起こされる病気があります。
今回はびまん性胸膜肥厚について詳しくご説明致します。

目次
1.びまん性胸膜肥厚とは
2.自覚症状、発症までの期間
3.診断
4.治療
5.びまん性胸膜肥厚による労災認定数
6.まとめ

1.びまん性胸膜肥厚とは

びまん性胸膜肥厚とは、アスベストにさらされたことによって肺を包む胸膜が慢性的に線維化し、炎症を引き起こすことで胸膜が腫れて厚くなることをいいます。胸膜の線維化が広がると、肺の表面が厚く硬くなるため肺が膨らまなくなり、それによって呼吸困難などの症状が現れます。びまん性というのは一部分に限定して起こるのではなく、徐々に広がっていくのが特徴です。びまん性胸膜肥厚によって線維化し厚くなり、硬くなった胸膜は再び元に戻ることはありません。また、発症前に良性石綿胸水と呼ばれる病気を生じることがあります。良性石綿胸水とは、アスベストが原因で胸膜に炎症が起こり、胸水がたまる病気です。この病気では、経過とともに自然に胸水が消滅する場合が多いため、基本的には経過観察となりますが、経過観察中や治った後にびまん性胸膜肥厚を発症することが多くあるため注意が必要です。

2.自覚症状、潜伏期間

びまん性胸膜肥厚の症状については、自覚症状が無いことも多いようですが、進行すると呼吸機能の低下による呼吸困難や胸痛、発熱等を伴うことがあります。また、肺炎などの呼吸器感染が起こると重症化しやすいため風邪をひかないように注意が必要です。比較的高濃度のアスベストのばく露により発症すると考えられていて発症までの期間はアスベストにさらされてから10年~40年程度だと言われています。

3.診断

診断は以下の項目で行われます。
・これまでの職業歴や住居歴からアスベストにさらされていた可能性があるか
・胸部レントゲン検査
・CT検査
胸部レントゲン検査の結果、両方の肺の側胸壁(肺の側面)の4分の1以上に胸膜肥厚が広がっていれば、この病気が疑われます。(片側のみに病気が認められる場合には、側胸壁の2分の1以上の胸膜肥厚が認められる場合)胸膜の肥厚は胸部レントゲン検査だけでは診断しにくいため、CT検査も行われます。胸膜が肥厚する原因はアスベストに限られるものではなく悪性腫瘍や、細菌性膿胸などの感染症でも起こる場合があるため、このCT検査によってアスベストを原因とする胸膜プラークとの鑑別も可能になります。原因となる病気が治ってから数年~数十年後に起こることが多いので、本人の病歴を詳しく医師に伝えることが重要となります。

4.治療

現在のところ根本から治療する方法はないため、軽症であれば経過観察となり風邪などに注意するなどの生活上の指導が行われます。また、息切れが強くなり、酸素吸入が必要な場合には在宅酸素療法が行われます。ご自宅に設置された酸素供給装置からチューブと通して酸素を吸入します。また外出時には携帯用酸素ボンベが使用されます。症状に応じて3カ月から半年に一度受診し、著しい呼吸機能障害が確認され一定の基準に該当する場合には労災や救済法の対象となります。

5.びまん性胸膜肥厚による労災認定数

2020年のびまん性胸膜肥厚労災請求件数は56件(前年度68件)、労災認定件数は61件、業務上認定件数は50件となっています。

6.まとめ

びまん性胸膜肥厚は良性石綿胸水やアスベスト肺などほかの病気に関連して起こることが多いため注意が必要です。また、原因となる病気が治ってから数年~数十年後に発症することがあるためとても厄介な病気です。効果的な治療はないですが、進行を遅らせるために早期発見し生活習慣の見直しをすることが重要です。

そのほかアスベストに関連する病気はこちら⇒アスベスト肺原発性肺がん中皮腫

アスベストにさらされる建設業務に従事し、健康被害に遭われた労働者の方やそのご遺族の救済のため、社会保険労務士法人きんかでは積極的に相談に応じておりますのでお気軽にご連絡ください。お問い合わせはこちら