お知らせ・コラム
アスベストによる健康被害 アスベスト肺
アスベストにさらされることにより引き起こされる病気があります。
今回はアスベスト肺について詳しくご説明します。
目次
1.アスベスト肺とは
2.自覚症状、発症までの期間
3.診断
4.予防
5.治療
6.アスベスト肺による死亡者数
7.まとめ
1.アスベスト肺とは
アスベストの粉じんを吸入することによって起こるじん肺です。じん肺とは、さまざまな粉じんを吸入することによって肺が繊維状になり、弾力性を失い硬くなったものをいい、肺が酸素を取り込みにくくなります。
2.自覚症状、発症までの期間
自覚症状として最も早期に出現するのは、運動能力の低下や軽い息切れです。階段や坂道、平地での急ぎ足の際に自覚することが多いです。この自覚症状は、アスベストを吸入する機会がなくなった後にも徐々に症状が悪化し、呼吸困難をきたすようになります。また、せきや痰を伴うこともあります。重症になると呼吸機能が低下し、酸素を取り込みにくくなり、強い呼吸困難となります。また、心不全の原因ともなります。
アスベスト肺はアスベスト粉じんを長期間(およそ10年~20年)にわたって大量に吸った場合に生じ、アスベストを吸った期間が10年未満で発症することは、ほとんどないと言われています。
3.診断
診断は以下の項目で行われます。
・これまでの職業歴や住居暦からアスベストにさらされていた可能性があるか
・胸部の画像検査
・肺生検(肺の病変部に生検針を刺して組織を採する検査)
一般に肺機能が異常となり、医師が聴診器で肺の音を聞くと、異常な音(断続性ラ音と呼ばれる音)が聞こえます。アスベストにさらされていた期間が長く、胸部X線検査や胸部のCT検査で肺が繊維状になる特徴的な変化が認められれば、アスベスト肺と診断されることがあります。
4.予防
アスベストを使用する産業での粉塵対策が改善されたため、現在ではアスベスト肺になる人は少なくなっています。家庭内にあるアスベストを含む資材が懸念されるのは、一般的にそれを除去する場合と家を改築する場合だけで、アスベストが使われた建物にいるからといった理由で病気になることはありません。
5.治療
今のところ根本的な治療法はないため、症状を緩和する治療となります。酸素療法では、息切れを緩和したり、薬剤やその他の方法により(塩分の摂取を制限)心不全のリスクを減らします。
6.アスベスト肺による死亡者数
日本でのアスベスト肺による死亡数は1968年には全国で5人と非常に少なかったですが、その後徐々に増加し、1986年以降は10人を上回るようになりました。GBDの推計によると1990年には58名、2000年は155名、2010年は341名、2019年は432名と増加の一途をたどっています。アスベスト肺の特徴は、女性の死亡が全体の20%強を占めることです。その理由としては、石綿紡織には女性労働者が多く、比較的長い石綿繊維を使うこと、乾式工程で粉じん抑制が難しく、他の石綿製品製造業に比べて高濃度ばく露を受ける機会が多かったことによると思われます。
7.まとめ
アスベストにさらされる機会が多ければ多いほど、アスベストに関連する病気を発症するリスクが高まります。アスベストは、非常に小さく砕かれないかぎり、肺の内部まで吸い込まれることはありません。危険性については広く注意喚起がなされましたが、今後もアスベストを含む断熱材が使用されている建物を解体する労働者は、リスクが高くなります。アスベストに関連する病気は潜伏期間が長く、今症状がなくても今後現れる可能性は十分にあります。被害のピークは2030年から2035年ごろとの見解もあります。そのほかアスベストに関連する病気はこちら
アスベストにさらされる建設業務に従事し、健康被害に遭われた労働者の方やそのご遺族の救済のため、社会保険労務士法人きんかでは積極的に相談に応じておりますのでお気軽にご連絡ください。
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